婦人公論に載っていた記事で、感心したので、紹介します。
「最期は孤独死もいとわない」というほど、ひとり暮らしが好きと微笑む71歳のエッセイストの日常が、以下のようなもの。
全文だと長くなるので、多少端折りました。

ムダを省き、できるだけお金を使わず、だけど心豊かに楽しく暮らすーー。ケチケチ生活とは、人生後半を快適に生きるための哲学です。私の場合40代になって老後の先行きが不安になったのが、「ケチ道」のはじまり。 その頃、てっきり自分は70歳くらいで死ぬだろうと思って年金の受給開始年齢も決めていたのに、すでにその歳も過ぎて現在71歳。東京郊外にあるURの賃貸住宅で、ひとり暮らしを楽しんでいます。部屋の間取りは3DK、家賃は5万5000円ほど。
「人生後半は自由に動ける立場でいたい」と、45歳でリタイアした後は、アルバイトや原稿の執筆で生計を立ててきました。将来への不安から、40歳を過ぎたときに個人年金に加入。公的年金を受け取るまでのつなぎとして60歳から70歳まで受け取れるよう設定しましたが、現在は公的年金のみが振り込まれています。 年金が振り込まれたら1万円ずつ引き出して、すべて千円札に両替し、「使えるお金」を用意します。この「使えるお金」が、1日1000円。主に食費に使い、薬代や雑貨なども範囲内に収めます。食が細いので、食べなかった分は冷蔵・冷凍。その保存期間を考えて、食材や惣菜の値引き品はあまり買いません。
買い物に行かない日の出費は0円。1500円使った日は、翌日の上限を500円に調整します。使わなかったお金は透明なビニール袋に入れ、見える貯金として保管。また、万一の出費に備え、クリップで留めたお札も財布に入れてあります。日々「あれがほしいけど、買えない」「これもほしい、でも買わない」の繰り返しで、お金が減らないように努力しながら、半ばそれを楽しんでいます。 家計簿は続きそうもないのでつけていません。毎月の収支は、雑記帳にメモ的に記録するのみ。ちなみに、先月使ったお金は、家賃や光熱費などは別として3万2000円でしたが、月によっては2万円程度のときも。電気代とガス代はそれぞれ2000円ほどで、最近、電気・ガスの合体プランにしたら少し割安になりました。水道代は2ヵ月で4000円弱、パソコンを使うので通信費は約1万円かかります。
ここで私の1日を紹介しますと、まず朝は7時半に起床。身支度をして、ベッドメイキングや掃除などを済ませます。掃除は充電式のハンディクリーナーでササッと。以前の掃除機は足腰に負担がかかるので買い替えました。3000円程度のものですが使いやすく、充電も3日はもちます。 8時半頃から朝食です。私は薄味派なので、納豆を食べる際は付属のタレを半分だけ使い、残りは煮物の味付けにとっておきます。納豆にちりめんじゃこや海苔を混ぜると、タレすら不要。お醤油や塩もありますが、まず使いません。 朝食後はパソコンで原稿を書き、正午に昼食の準備。3食のうち、一番ボリュームがあるのがこの昼食。朝食とお昼は、キッチンにある小さな「特等席」でいただきます。窓越しに、日差しを受けて輝く緑を眺めながらのランチが、私の1日のハイライト。この「絶景食堂」でのランチが「正餐」です。
食事が済んだら、13時半から、買い物を兼ねた長い散歩に出かけます。2時間ほどの散歩と買い物を終えて帰宅したら、すぐに夕食の準備です。火は使いたくないし、食器を洗う水道代も節約したいので、昼の残りものや漬物、レンジでチンした冷凍かぼちゃなどを、小皿にチマチマと盛りつけるだけ。それを1品ずつキッチンからリビングに運んで食べる。籘製のスツールの上に、小さなトレーを置いたものがテーブル代わり。1品ずつ食べることで食べすぎを防げますし、小料理屋気分も味わえます。 19時になったら、食器を片づけて歯磨き。もずくなどが入っていた透明なプラスチック容器を洗面所用のコップとして再利用中。 21時まではテレビを観たり、ラジオを聴いたりして過ごします。観るのは歴史関係や美術館の情報など、知識を得られる番組。21時になったらお風呂に入り、22時には就寝します。
お金をかけない生活は、資源を節約する生活でもあります。私は、ケチで環境にも優しいエコロジーな生き方を、「ケチカロジー」と呼んでいて、このケチカロジー生活は、私が自身の裁量でルールを決められたからこそできること。 そう考えると、ひとりは決して悪いことじゃない。20代から10年ほど結婚していた時期がありましたが、夫婦それぞれの時間が長かったので、感覚的には今も昔も変わらずずっとひとり。 私は、死ぬときも誰かに見守られて死にたいとは思わない。太陽が降り注ぐ窓の下で、床に寝そべってスーッと眠るように逝けたら幸せです。
ケチを貫いてきて一番良かったことは何かと聞かれたら、「節約で貯めたお金でドイツに行けたこと」と答えます。50歳からの10年間で計9回、ひとりでドイツを旅しました。 私はカスパー・ダーフィット・フリードリヒというドイツの風景画家が好きで本も書いているのですが、その人が眺めたであろう風景と原画をどうしてもこの目で見たかった。ドイツ語を学ぶより、まず行動ありき。リュックを背負って道なき道を行く過酷な旅でしたが、怖さや寂しさを感じることはなく、幸福感のほうがはるかに大きかった。貯金はかなり減りましたが、体力があるときに行っておいてよかったです。 人生100年と言われる時代を乗り切るために、これからも楽しみながらケチ道を邁進していこうと思います。
うーん、見事な人生観、見事な生き方だと、思いました。
ただのけちではなく、メリハリのあるケチ。
そのおかげで、ドイツにも何回も行けたということ。
この潔い生き方は、大いに見習うべきだと思いました。
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